食生活の欧米化に伴い狭心症や急性心筋梗塞など虚血性心疾患の発症率は年々上昇しています。
虚血性心疾患をはじめとして循環器疾患は全般的に早急な対処が必要な場合が多く、循環器内科の医師は、内科とICU・CCU(集中治療部門)当直医の先生方の協力のもとに平日は勿論のこと、休日、夜間帯も循環器待機制度を整備し循環器系の急患に対応すべく診療に臨んでいます。
概要・診療方針
概要・診療方針
わが国は現在、急速な社会の高齢化と、食生活を始めとした生活環境の欧米化が進んでいます。それに伴い、循環器領域においても虚血性心疾患に代表される動脈硬化性疾患が年々増加しています。虚血性心疾患、心不全、高血圧、不整脈、脳血管障害などの循環器系疾患は、病死の主たる原因疾患であるだけでなくその有病率も非常に高く、循環器系疾患に対する治療と、それらの発症基盤となる高血圧、高脂血症などに対する治療ならびに予防は非常に重要です。
虚血性心疾患をはじめとした多くの循環器疾患は全般的に早急な対処が必要であり、心臓血管外科、ICU・CCU(集中治療部門)スタッフの協力のもと、原則24時間体制で診療を行っています。
診療内容
虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)、高血圧症、高脂血症、心筋症、心臓弁膜症、不整脈(徐脈・頻脈など)、心不全など多岐にわたります。
最近は狭心症や急性心筋梗塞など虚血性心疾患の発症率が上昇し、当院でも増加傾向にあります。1999年から当院にICU・CCU(集中治療部門)が開設され救急体制が確立されており、毎年非常に多くの循環器疾患の患者さんを受け入れています。虚血性心疾患に対しては、積極的に心臓カテーテル検査および冠動脈インターベンション(PCI)による治療を施行し、良好な成績を上げています。
近年患者数が増加している心不全に対しては2015年度より広島県が行っている「心臓いきいき推進事業」の地域心臓いきいきセンターとして、「心臓病教室」を通して患者さんへの教育を、「心臓いきいきキャラバン研修会」を通して地域医療福祉関係者との連携構築を、「外来心臓リハビリテーション」を通して患者さんへの個別指導を行い、再入院防止、生命予後改善に取り組んでいます。
2017年度より不整脈専門医が赴任し、不整脈に対する非薬物療法として有効性が高いカテーテルアブレーションを開始いたしました。心房細動、心房粗動、発作性上室性頻拍、心室頻拍等の不整脈に対してより充実した診療が行える様になりました。また、徐脈性不整脈に対して従来のペースメーカーよりも低侵襲な、心臓内に小さな円筒形の本体を留置して心筋を直接刺激するリードレスペースメーカーの植え込みも行っています。
当科の特色
広島県西部の病院や診療所(開業医)と常時の診療提携を行っており、当院救急ホットラインを経由または病院当直を介して緊急患者受け入れ体制が整っています。
虚血性心疾患や致死性不整脈などが原因の院外心肺停止の患者さんに対して救急科の医師と協力し、経皮的人工心肺装置(ECMO)や大動脈バルーンパンピング(IABP)などの補助循環装置を導入し集学的な治療をおこないます。
近年、冠動脈インターベンション(PCI)は急性心筋梗塞や狭心症に対して使用される有効な治療手段となりました。長期成績も安定している薬剤溶出ステント(DES:Drug Eluting Stent)の使用により、多くの冠動脈病変に対して長期成績が期待されています。また、中等度狭窄病変には心筋シンチや冠血流予備量比 (FFR:Fractional flow reserve)等での虚血評価を行っています。石灰化の非常に強い病変ではロータブレーターも施行しており、最先端の治療手技を提供いたします。心臓CT検査を施行することにより、狭窄病変の有無だけでなく、動脈硬化(冠動脈プラーク)性状の診断・評価を行っています。動脈硬化の原因となる脂質異常症に関しても、超悪玉コレステロール(sdLDL-C)などを考慮した治療など積極的に取り組んでいます。
心房細動などの頻脈性不整脈に対しては前述のカテーテルアブレーションを経験豊富な専門医が施行することにより良好な治療成績を上げています。徐脈性不整脈に対するペースメーカー治療(リードレスペースメーカーを含む)や致死性不整脈に対する植込み型除細動器(ICD)の植え込み術も行っています。
肺塞栓症・深部静脈血栓症例には血栓溶解療法や下大静脈フィルター留置術も施行可能です。
大動脈瘤・解離・閉塞性動脈硬化症といった疾患に関しても内科的な薬物治療、カテーテルによる治療、心臓血管外科による手術療法など病態に応じた治療法を選択しております。また前述のカテーテルによる治療(PCI)で対応できない冠動脈バイパス術が適応となる病変には、当院の心臓血管外科の医師と密な連携をとり、適切な治療法が選択できる状況を常時構築しております。
2024年に新棟が建設され、二つの新しい血管造影室の稼働によりカテーテル検査・治療件数の増加が見込まれます。経年的に増加する循環器疾患に対して十分な体制が、機器の面でも充実いたします。当院は循環器診療の中核病院として更なる重責を担っていく所存です。
医師・スタッフ
診療予定表
初診受付時間 8:30~11:00
※急患はこの限りではありません。
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月 |
火 |
水 |
木 |
金13:00~17:00 |
初診 |
新田 辻山 |
山根 |
池内 |
荘川 辻山 |
藤井(裕) 奥本 |
再診 |
辻山 山根 池内 |
荘川 藤井(裕) |
荘川 新田 |
辻山 奥本 山根 |
新田 池内 |
午後診療13:00~17:00 |
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辻山(院内) |
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藤井(隆) |
辻山(院内) |
医師・スタッフのご紹介

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診療部長
循環器内科 主任部長(総合統括)
血管造影センター長
地域救命救急副センター長
臨床工学科 主任部長
内科専攻科 部長
荘川 知己
Tomoki Shokawa
- 資格
- 医学博士
- 一般社団法人日本内科学会 総合内科専門医
- 一般社団法人日本循環器学会 循環器専門医
- 一般社団法人日本心臓病学会 FJCC (Fellow of the Japanese College of Cardiology)
- 一般社団法人日本心不全学会
- 一般社団法人日本不整脈心電学会 植込み型除細動器/ペーシングによる心不全治療研修証
- 一般社団法人日本内科学会 認定内科医
- 一般社団法人日本心臓病学会 心臓病上級臨床医
- 一般社団法人日本内科学会 JMECCインストラクター
- 一般社団法人日本内科学会 指導医
安心と安全をモットーに患者さんに信頼される医療を行ないたいと思います。どうぞ宜しくお願い申し上げます。

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主任部長代理(心臓カテーテル室担当)
山根 健一
Kenichi Yamane
- 資格
- 一般社団法人日本循環器学会 循環器専門医
- 一般社団法人日本内科学会 総合内科専門医
- 一般社団法人日本エコー図学会 SHD心エコー図認証医
- 一般社団法人日本心血管インターベンション治療学会
- 日本心血管インターベンション治療学会専門医
令和5年4月より循環器内科で勤務させていただいております。専門は虚血性心疾患、心不全になります。エビデンスに基づいた上で、それぞれの患者さんに対して最善の医療を提供できるように頑張りますので、よろしくお願いいたします。

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循環器内科 部長
急性期リハビリテーション科 部長
新田 和宏
Kazuhiro Nitta
- 資格
- 医学博士
- 一般社団法人日本循環器学会 循環器専門医
- 一般社団法人日本内科学会 認定内科医
- 一般社団法人日本内科学会 総合内科専門医
- 一般社団法人日本心血管インターベンション治療学会 認定医
- 特定非営利活動法人日本心臓リハビリテーション学会 心臓リハビリテーション指導士
- 一般社団法人日本内科学会 指導医
地元である廿日市の中核病院で勤務できることを大変嬉しく思っています。少しでもお役に立てるよう精進して参ります。宜しくお願い致します。

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循環器内科 部長
池内 佳裕
Yoshihiro Ikeuchi
令和6年4月から6年ぶりに当院で勤務することになりました。専門は不整脈ですが、内科や循環器内科を広く全人的に診られるように全力を尽くして参りたいと思います。若輩者ではございますが、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。

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部長
藤井 裕人
Yuto Fujii
- 資格
- 医学博士
- 一般社団法人日本内科学会 認定内科医
- 一般社団法人日本循環器学会 循環器専門医
- 一般社団法人日本心血管インターベンション治療学会 認定医
令和5年4月より循環器内科にて勤務させて頂いております。愛媛県松山市での初期研修後、土谷総合病院、広島大学病院で研鑽を積んでまいりました。広島県西部の循環器診療に貢献できるよう尽力したいと思いますので、宜しくお願い致します。

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医員
奥本 尚範
Takanori Okumoto

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医員
辻山 修司
Shuji Tsujiyama
- 資格
- 医学博士
- 一般社団法人日本内科学会 認定内科医
- 臨床研修指導医
- 一般社団法人日本循環器学会 循環器専門医
- 一般社団法人日本内科学会 指導医
虚血性心疾患・不整脈(徐脈・頻脈)・心不全・高血圧症・末梢血管疾患何でも対応いたします。わかりやすい説明と的確な診断、日本における標準的治療に積極的に取り組みます。よろしくお願いします。

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医員
藤井 隆
Takashi Fujii
- 資格
- 医学博士
- 一般社団法人日本内科学会 認定内科医
- 一般社団法人日本循環器学会 循環器専門医
- 日本医師会 認定産業医
- 臨床研修指導医
- 一般社団法人日本内科学会 指導医
2014年春に当院17年間所属いたしました循環器内科から、臨床研究検査科に移動いたしました。週に1回の再診外来を施行いたします。よろしくお願いいたします。
診療機器
血管造影装置(2台)
この機械を利用して心臓カテーテルを施行します。手や足の動脈からカテーテルという直径1.5mmから2.0mm程度の細い管を心臓の冠動脈の入り口まで挿入し、造影剤を注入し血管を撮影することで冠動脈、下肢動脈などの狭窄の有無を調べます。冠動脈、下肢血管などの狭窄の有無を最終診断し、必要に応じて血管の形成を行います。
心臓CT検査装置
256列CT装置を使用しており、動きのある心臓の血管(冠動脈)でも狭窄病変や狭窄部の動脈硬化(プラーク)の性状評価が可能であり、画像診断部の医師とともに診断を行っています。心筋の厚みや壁運動異常に関しても評価しています。侵襲的なカテーテル検査と異なり非侵襲的に診断が可能です。
心臓超音波断層エコー・ドプラー装置
心臓の形態的診断(先天性心疾患を含)、心筋の動き(心不全、心筋梗塞など)の解析を行います。また心臓や血管内の血流も評価できますので弁膜症などの診断に大変有用で外来でもできる体への負担がない検査です。
心臓核医学検査装置
微量の放射性物質を血管(静脈)内に注入し、アデノシンなどの薬物負荷の前後で心臓への取込みを調べることで、心筋虚血の有無を非侵襲的に診断します。外来で施行可能な検査です。
診療実績
令和4年(2022年)の
年間診療実績
虚血性心疾患に関しては、外来でできる非侵襲的な冠動脈(心臓を栄養する血管)の評価法として、負荷心筋シンチ検査を336例、画像診断・放射線部門と協力して256列CT装置を利用した心臓CT検査も607例実施しています。
また侵襲的な検査として心臓カテーテルを計396例(検査245例・治療151例)施行しています。冠動脈の狭窄が発見されれば風船で狭窄部を拡張し、ステントと呼ばれる金属の筒を冠動脈内に留置したり、薬剤コーティングバルーンと呼ばれる特殊な風船を用いる経皮的冠動脈カテーテルインターベンション(PCI)を151例に施行しています。その中には急性冠症候群症例などに対する緊急PCIも71例含まれています。また、高度石灰化病変に対するロータブレーターも10例に使用しています。
下肢虚血を含む閉塞性動脈硬化症に関してもカテーテルを利用した血管内治療(13例)を行っています。
心臓の形態的な診断、心臓機能(心不全、弁膜症、心筋梗塞など)解析の目的で心臓超音波(エコー)検査を5865件施行しています。より詳細な心臓機能や心腔内血栓の有無が評価可能な経食道心エコー検査(食道から心臓を診る検査)も142例施行しています。
不整脈に関しては、主に心房細動などの頻脈性不整脈に対してカテーテルアブレーションを92例、徐脈に対してペースメーカーの植込を41例施行しています。より低侵襲なリードレスペースメーカーの症例も徐々に増えています。またホルター心電図検査を614例施行しています。
近年患者数が急激に増加している心不全患者は年間302人の入院実績があり、患者さん毎に最適な治療を提供しています。
検査・治療 |
件数 |
生理学的検査 |
運動負荷試験(トレッドミル) |
16 |
ホルター心電図 |
614 |
経胸壁心エコー図(成人のみ) |
5865 |
経食道心エコー図 |
142 |
急性心筋梗塞患者数 |
73 |
心臓カテーテル |
396 |
冠動脈造影検査 (経皮的冠動脈形成術:PCIを含めず) |
245 |
緊急PCI |
71 |
待機的PCI |
80 |
冠動脈カテーテル治療総数 |
151 |
補助循環 |
大動脈内バルーンパンピング(IABP) |
27 |
経皮的心肺補助装置(PCPS) |
6 |
末梢血管 カテーテル治療 |
経皮的末梢血管形成術(PTA) |
13 |
不整脈関係 |
カテーテルアブレーション |
92 |
ペースメーカー植込 |
41 |
ペースメーカー交換 |
12 |
非侵襲的 冠動脈検査 |
心臓核医学(RI)検査 |
336 |
心臓CT検査 |
607 |