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スギ花粉のカウント、ついでに黄砂について

2020年1月 1日

花粉症と言えば、ほとんどの人が春のスギ・ヒノキ花粉症を思い浮かべると思います。花粉症とは花粉が原因となる上気道アレルギー症状の総称であり、スギ・ヒノキ以外にも多くの花粉症があります。イネ科雑草による花粉症は5~6月頃がシーズンですし、キク科雑草の花粉症は秋がシーズンです。ミカン農家などでは柑橘類の花粉症もみられます。しかしながらこれらの花粉症はスギ・ヒノキ花粉症に比べ症状が比較的軽く、患者数も比べ少ないためあまり話題に上らないことが多いのです。近年スギ・ヒノキ花粉症は国民の約三割が患者という状態であり、春のシーズンになると天気予報とともに花粉飛散予報も報じられるありさまです。そこでスギ・ヒノキ花粉飛散数について簡単に説明します。

スギ・ヒノキ花粉の飛散数は花粉測定器にワセリンを塗ったガラススライドを設置してだいたい24時間毎に交換し、付着した花粉を人間が顕微鏡で観察して1㎠当たり何個と数えています。当院でも1990年から毎年1月中旬より4月末まで観測しており、長年のデータの蓄積により前年7月の平均気温から翌年の花粉総飛散数を予測できるまでになっています。

翌年の飛散総数予測の要点としては、前の年の夏が暑ければ翌年のスギ・ヒノキ花粉の飛散数は多くなるということ。前年多くの花粉をつけたら翌年は休むという植物の特性があるということです。それゆえ大飛散年が2年続くことはほとんどありません。これまでのところ大飛散年はすべて奇数年(西暦、年号ともに)です。大飛散でなくても奇数年は飛散数が多いと思ってもらえばよいです。ちなみに来年は偶数年でもありますので、平年並み(今年の夏は暑かったけれど)の予想です。ついでに言うと広島県を含む中国地方は、全国的に見てスギ・ヒノキ花粉が比較的少ない地域です。

話は変わりますが、近年花粉の飛散数に比べて症状がひどくなっている傾向があり、その原因として黄砂が関与しているのではと考えている研究者もいます。黄砂とはゴビ砂漠や中国の黄土台地の砂が砂嵐によって上空に巻き上げられ、偏西風に乗り降り注ぐ気象現象です。年々黄砂が観察される日数が増えてきており、中国の近代工業化に伴う樹木の乱伐採や地球規模での砂漠の拡大が懸念されています。

黄砂の粒子は岩石の主成分であるケイ素が主体で、大きさはだいたい直径4㎛(1㎛は1㎜の1000分の1)です。スギ花粉が直径30㎛ですので、その約7分の1と小さく、花粉に比べて末梢の気管や肺に到達しやすい大きさです。スギ花粉症では喘息などの下気道症状は、以前はあまりみられなかったのですが、最近は咳や喘息症状を伴うケースも増えてきている印象です。花粉症の患者さんによく「黄砂アレルギーですか」と聞かれるのですが、黄砂自体には花粉のようなアレルギー反応を起こすタンパク質はなく、気道粘膜に対する物理的な刺激を与えるため症状を悪化させているようです。黄砂も含めての花粉症対策としては、黄砂粒子が小さく通常の花粉症用のマスクではすり抜けてしまうので、より目の細かい風邪ウイルス対策用のマスクを着用されるとよいと思います。

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