消化器内科

概要・診療方針

概要・診療方針

消化器内科は、食道、胃、腸、肝臓、胆嚢、膵臓などの臓器の病気を診療する内科です。内科の中でも病気の種類がもっとも多い分野で、数多くの患者さんがいらっしゃいます。消化器内科では内視鏡機器や超音波機器などの最新機器が活躍します。これら機器を使えば患者さんへの少ない負担で最大の治療効果をあげることができるのです。

当院の消化器内視鏡部門は、2010年4月に最新の内視鏡機器が整備され「内視鏡センター」と改称し新たな一歩をふみ出し、2024年には新たな「内視鏡センター」となる予定です。広島総合病院消化器内科では、これらの機器を使って最先端の医療を提供しています。また、吐血に対する緊急内視鏡検査など、地域医療に大いに貢献しています。

広島総合病院消化器内科は、地域でも評判の良質な医療を提供しています。

診療内容

上部消化管

内視鏡診断において、は、新しい内視鏡の導入により、特殊光による観察や、拡大観察が可能となり、色素散布と併せて用いる事により微小病変の発見と共に診断の精度の向上に貢献しています。また、検診などでは経鼻内視鏡(細径内視鏡)など人に優しい内視鏡機器を使用しています。処置などの時には、安楽な内視鏡処置を目的として二酸化炭素送気による検査や、鎮静麻酔下なども積極的に行っています。食道や胃の主な疾患としては、食道癌、GERD(逆流性食道炎)、胃炎、胃癌、胃潰瘍と十二指腸潰瘍などがあります。この分野での話題は、診療実績にもあります内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)です。これは早期胃癌などに対して胃内視鏡で切除する方法で、大きなものまで切除できるメリットがあり認知されるようになって来ました。しかしながら高度な内視鏡技術が必要で限られた施設でしかなされていないのが現状です。当院ではこの方法により胃癌の治療をおこなっています。その他、胃癌や食道癌で食べ物が通らなくなる状態を治療するステント治療も患者さんのQOL(生活の質)改善のために積極的におこなっています。当科ではこれら最先端の診療技術で診療にあたっています。

肝臓

肝臓疾患としては、脂肪肝(NASH/NAFLD)、急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変や肝癌などがあります。慢性肝疾患の原因としては、ウイルス、アルコールや免疫および代謝異常などが考えられます。
C型肝炎に対する内服による抗ウイルス薬が引き続き行われており、8週間から12週間という短い期間の治療で、治癒効果は慢性肝炎から、非代償期肝硬変に関わらずほぼ100%の高率になっています。B型肝炎に対する治療も、核酸アナログ製剤が有効でかつ長期投与も安心、安全な物に変わってきております。当科はこれらの治療を積極的におこなっています。
肝癌の診断方法として造影超音波検査やプリモビスト造影MRI検査などがあります。私たちはこれらの診断法を最新の機器で実施し臨床の場で活用しています。肝癌に対する治療面では、肝動脈塞栓術、ラジオ波焼灼療法、放射線治療を選択組み合わせておこない最近の治療成績は著しく向上しています。また、最近では経口の癌化学療法(分子標的薬剤)なども、より有効性が期待できるものが認可されており、積極的におこなっています。
最近問題となっております、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)や、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH:ナッシュ)は、内臓肥満、2型糖尿病、高血圧、脂質異常症、高尿酸血症などの生活習慣病と関連しており、全ての病気を一括管理する事も重要です。当科ではNASH専門外来を開設し、NASH診断に必須の肝生検検査にて確定診断し、肝臓を含めたトータルケアを行っています。さらに、全国多施設での共同研究を進めるとともに、糖尿病薬によるNASH改善の多施設共同の臨床研究なども進め、国内・広島県下でも有数のNASH診療実績を誇ります。

胆道・膵臓

高齢化によって総胆管結石などの病気で入院される患者さんが増えています。総胆管結石は内視鏡治療で治すことができる病気です。当院は、総胆管の胆石に対して十二指腸カメラを使って石を取り出す治療法(内視鏡的砕石術)を積極的に行っている施設のひとつです。この治療法は、開腹手術をせずに胆石を内視鏡的に取り出す方法で高度の内視鏡テクニックが必要です。また、胆管癌や膵癌では黄疸になりやすく、内視鏡を使った治療が必要になります。当科は、日本消化器内視鏡学会だけでなく膵臓学会や胆道学会の認定施設でもありますので、ステント留置術など、胆膵疾患に対する最新の治療を安全に行う事ができます。抗がん剤や放射線治療を受けるため、広島県内外から多くの患者さんが通院されており、安心して治療を受けていただける施設です。
特に膵癌の早期発見と最善の治療には力を入れており、膵がんの早期診断を目指した「Hi-PEACEプロジェクト」に取り組んでいます。これは、かかりつけ医の先生がたから、膵がんの危険因子をもつ患者様を自覚症状のない段階でご紹介いただく企画です。2022年11月から2023年3月まででの5ヵ月間に、79例のご紹介をいただき、11例の膵がんを診断することができました。これまでより早期で診断ができる様になりました。また、全国的にも評価の高いミルクティーエコー検査や膵がんドックを行っており、専門医が説明と指導をしています。
がん患者の皆さんやご家族には、安心して治療を受けていただける様に、「膵臓がん胆道がん教室」という、支援事業も行っています。医師や看護師、薬剤師の他、多職種の専門職とともに、毎月2回の勉強会(患者説明会)を行っています。

下部消化管

下部消化管疾患としては、大腸ポリープ、大腸癌などの腫瘍性疾患に加え、潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患があります。大腸ポリープや早期大腸癌に対する内視鏡的粘膜切除術(ESD)は、日常診療で多数おこなわれています。また、大腸悪性狭窄による大腸ステント留置術が2014年より保険収載され当院でも積極的に施行しております。 炎症性腸疾患の治療法として白血球除去療法につきましても当科は早くから潰瘍性大腸炎にこの治療法が有用であることを確認し、ずいぶん以前から臨床応用しています。炎症性腸疾患についてはその他にも多種多様な治療法が推奨されており一人一人の病態に応じた治療を行っております。 また、胃十二指腸と大腸は通常内視鏡にて観察可能ですが、胃と大腸の間にある小腸は本来観察が困難な部位でした。近年、カプセル内視鏡や小腸内視鏡が開発され小腸の観察が可能となってきました。当院においてもカプセル内視鏡検査や小腸内視鏡が可能です。カプセル内視鏡は侵襲度も低く件数が増加しています。

当科の特色

広島総合病院消化器内科は、日本消化器病学会認定施設、日本消化器内視鏡学会認定施設、日本老年医学会認定施設、日本胆道学会認定施設、日本膵臓学会認定施設、PEG在宅医療学会認定施設に指定されています。これらの指定は学会が認めた高度な良質医療が提供できることを示しています。

さらに当科では、高度医療の実践のみならず、患者さんのQOL(生活の質)を最大限に考慮した治療を心がけています。我々の癌患者さんに対する治療の考え方を説明します。一言に癌と申しましても、早期癌から末期癌までさまざまな段階の患者さんがいらっしゃいます。まず正確に進行度等を診断し、患者さんや御家族の方に充分納得のいく説明をさせていただきます。その上でご本人ご家族の同意を得た上で、完治をめざした最先端の治療方針から癌そのものに対する治療ではなく症状や生活の質を重視した治療(緩和ケア)までを境目なく提供いたします。われわれは、最先端の内視鏡的治療から緩和ケアまで個々の患者さんを全人的に加療していく方針をとっています。