救急・集中治療科

概要・診療方針

概要・診療方針

集中治療室とは、「内科系、外科系を問わず呼吸、循環、代謝そのほかの重篤な急性機能不全の患者を収容し強力かつ集中的に治療看護を行うことにより、その効果を期待する部門である。」と定義されています。重い患者さんを見守る集中治療室は、中央手術室に隣り合う病棟の中枢部に位置します。

カラー表示のコンピューター制御モニタリングシステムを導入し、ベッドサイドモニターは吊台式で、最新のレスピレータを全床に配備、大動脈バルンパンピング(IABP)、ペースメーカー、除細動器、透析および血漿交換装置などを用い、重症患者の呼吸と循環の管理にあたります。超音波診断装置を初めとする多くの診断機器も常備されています。また付属する高気圧酸素治療室では、一酸化炭素中毒をはじめとする各種低酸素障害患者の緊急治療にも対応しております。

つまり、集中治療室は重症かつ緊急を要する患者さんを、一箇所にあつめて集中的に医療資源をふりむけ、効率化をはかる現代医療システムです。急性心筋梗塞などによる急性心不全や致死性不整脈、ショック、種々の原因による呼吸不全、緊急手術やハイリスク患者の術後管理などを始め、救急医療とのタイアップによって、あらゆる重症患者がまずここに収容されることになります。

広島総合病院の集中治療室は8床で構成されています。一方、職員は2名の専従医師、11名のスタッフ医師、13名の医療工学士、29名の看護師及び1名の看護助手が配置されています。

年間の集中治療室に入られる患者さんは約720名で、平均在室日数は4.1日です。そのうち集中治療室と救急車を直接むすぶホットライン経由ではいられる救急患者さんは約115名前後です。(ホットライン総数は220-280名)

診療内容

あらゆる重篤な急性機能不全の患者さんに対して強力かつ集中的な治療および看護をおこなっています。

当科の特色

人工呼吸や血液浄化(持続血液濾過透析など)を中心に24時間体制ならではの治療を行い、患者さんの救命に尽力しております。また、高度救急医療の拠点として、救急車とのホットラインを実施しています。

また、病院前救護の観点から救急救命士の就業前や、再教育、on-line controlとして気管挿管や薬剤投与支持も行っています。

現状の課題としては全国的な問題であるが救急関連の医師・看護師の不足と燃え尽き症候群による職場からの離脱が問題となっています。活気のある持続可能な組織運営のため優秀なスタッフ確保は最重要課題です。この解決策として、救急初期治療を通して適切な指導と幅広い臨床経験を提供することにより、良質の研修医の確保し、しいては救急スタッフの確保を目指します。

研究活動

重症感染症(敗血症)患者の救命率の向上

重症感染症(敗血症)は、細菌によって引き起こされた全身性炎症反応症候群(SIRS)です。細菌感染症の全身に波及したもので非常に重篤な状態であり、無治療ではショック、DIC、多臓器不全などから早晩死に至ります。もともとの体力低下を背景としていることが多く、治療成績も決して良好ではありません。当院でもその死亡率は高く、28-35%(2008-2013年)の患者さんが亡くなられています。

Surviving Sepsis Campaign Guideline 2012では循環管理だけではなく感染対策、続発する臓器不全や周辺病態に対しての集中治療が示されています。当院では特に初期蘇生の循環管理についてearly goal-direct therapy(EDGT)を積極的に推し進めています。

なおEDGTを行う場合は大量輸液によって肺の酸素化が障害される場合があり、人工呼吸器管理となることがあります。当院では高頻度振動換気法を導入し、その治療成績を検討しています。

低温療法の導入

脳低温療法とは、脳が障害を受けた際に脳の障害がそれ以上進行することを防止するため、体温を低く保つ治療法です。通常、脳が重大な障害を受けた際には脳組織に浮腫が起こるほか、カテコールアミンやフリーラジカルなどが放出され、進行的に組織が破壊されていきます。救急の脳障害においては、この進行的な脳組織の破壊を抑制することで救命率・機能予後の向上が見込まれ、またそれを抑制する事が重要な課題となっています。

蘇生ガイドライン2010(ACLS 2010)でも脳低温療法が新たに加えられたことを契機に、当院でも水冷式ブランケットを用いて患者の体温を34℃程度に下げることで、代謝機能を低下させて、脳内での有害な反応の進行速度を抑え、蘇生後脳症の治療成績の向上に努めています。

オートプシー・イメージングの検討

オートプシー・イメージング(Autopsy imaging、Ai)とは、狭義では死亡時画像診断のことです。コンピュータ断層撮影 (CT)や核磁気共鳴画像法 (MRI)などによって撮影された死後画像により、死体にどのような器質的病変を生じているのかを診断することによって、死亡時の病態把握、死因の究明を目的とします。

当院では2007年よりオートプシー・イメージングを導入し画像診断部の支援のもとに、Ai認定施設(クラスA)となっています。救急搬送された患者のうち、290例近くのAi施行にて、約4割の患者の死亡原因の診断・推定に役立ちました。

救急搬送される症例には、自宅での服毒自殺や幼児虐待などの外因死の可能性がある症例が含まれます。体表の情報からこれらを判断するには限界があり、Aiを取り入れることにより正確な判断が可能になる可能性があります。外因死などが疑われる場合には、所轄の警察署へ検視依頼を行っています。