画像診断部
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2020年8月 4日
2017年11月、当院の256列レボリューション CTでデュアル エネルギーCT撮影が可能となりました。デュアル エネルギーCTは、2種類の異なるエネルギーを持つX線で撮影する方法です。従来のCTより高精度な物質弁別が可能となり、臨床に有用なさまざまな解析画像を得ることができます。以下に一部例を示します。
デュアルエネルギーCTは、40〜140keVまでさまざまにエネルギー値を変えてX線画像が撮影できます。
低エネルギーレベルのX線画像は、コントラスト分解能が向上して造影効果が増強するため、投与する造影剤量が低減できます。現在、これまでのCTより3割減の造影剤量で撮影しており、とくに腎臓の機能が悪い患者さんに大変有用です。
一方、高エネルギーレベルの画像は、金属から出る余分な雑音(アーチファクト)が低減できるため、きれいな画像を得ることができます。
図1 肝臓のダイナミックCT、低エネルギーレベルのX線画像(60keV画像)
造影剤量をこれまでと比べて3割減量して撮影しましたが、以前と遜色ない良好なコントラストが得られています。
デュアルエネルギーCTでは、物質密度を算出することにより、脂肪、水、ヨード、カルシウムなど特定の物質を描出した画像を構成することができます。
水とヨードを弁別して水密度を強調し、ヨード密度を抑制した画像(水/ヨード密度画像)は仮想単純画像とも呼び、造影剤の影響を排除したCTです。これにより新鮮な血栓や出血が描出できます。
図2 胸部造影CT、水/ヨード密度画像
大動脈弓の偽腔(矢印)は高吸収(白っぽい部分)に描出され、急性期大動脈解離と診断されました。
図3 脳CT
急性期脳塞栓症に対する血栓回収術直後のCT
図3a 単純CT 右中・後大脳動脈領域は高吸収(白っぽい部分)を示しました(矢印)。この画像では出血か造影剤の漏れ出しか判断困難です。
図3b 水/ヨード密度画像
ヨードを抑制する画像では、同部は低吸収(黒っぽい画像)となり、造影剤の漏れ出しとわかります。
実効原子番号(effective Z)とは、あるボクセル(画像の最小の立方体)を単一の原子で置き換えると仮定したときに、そこに該当する原子番号のことです。この実効原子番号を利用することにより、物質の成分分析を行うことができます。
図4 腹部CT
図4a 腹部CT冠状断像
左尿管結石を認めます(矢印)。
図4bヒストグラム
この尿管結石の実効原子番号は黄色領域に相当し、成分はシュウ酸カルシウムと推定できます。