腎臓内科
腎臓内科
慢性的に腎機能が低下している(eGFR 60mL/min/1.73m2未満)、もしくは尿蛋白を認めるなど、腎機能低下が進行し透析リスクのある病態を慢性腎臓病(CKD:Chronic Kidney Disease)と呼びます。2024年の統計では約2,000万人の慢性腎臓病患者さんがいると推定されています。これは成人の5人に1人にあたり、新たな国民病と位置付けられています。高齢化社会を反映して、高血圧や加齢による腎障害である腎硬化症が増加しています。腎硬化症は透析導入原因の第1位である糖尿病性腎症についで多くなっており、糖尿病性腎症と腎硬化症で透析導入の約6割を占めています。高齢者の増加に伴い、今後もさらに増加することが予想されています。
慢性腎臓病は初期段階では症状は乏しく、また大部分は何の症状もないまま徐々に腎機能が低下していきます。末期腎不全となれば透析が必要になることもあるばかりでなく、心・血管疾患の発症と生命予後に強く影響を与えていることが多くの研究で明らかにされており、透析回避および血管疾患の予防の観点から、慢性腎臓病をいかに早期段階から治療していくかが現在大きな課題となっています。当科では、原発性糸球体・尿細管間質性疾患、高血圧、糖尿病、膠原病、血液疾患などに伴う全身性腎疾患、急性腎障害、高血圧、電解質異常など、あらゆる腎臓病に対し幅広く診療に当たっています。腎炎に対しては腎生検を中心とした診断とその診断結果の基づいた集学的な治療を心がけています。腎不全に対しては食事・薬物療法などによる保存的加療および透析療法を実施しています。
検尿や血液検査、腎機能検査、レントゲン検査によって腎疾患の有無はある程度判断可能ですが、病名や病状(活動性)を正確に評価し、そしてその評価に基づいた適切な治療を選択するためには腎臓の組織検査(腎生検)が必要となる場合があります。腎生検は入院の上、背部から超音波検査装置(エコー)で腎臓を見ながら専用の針で腎臓の一部分を摂取する検査です。当院では腎生検を年間40~50例ほど施行しており、患者さんに安全かつ少ない負担で検査を受けて頂けるように日々努力しております。
腎障害が進行してきた場合には、蛋白制限、塩分制限、カリウム制限などの食事療法を行うことにより、腎障害の進行を抑え、CKDの進行やCKDに伴う合併症を予防する必要があります。当科では管理栄養士と共同して低蛋白、減塩などの食事療法の指導に特に力を入れており、CKD患者さんにとって最適な食事療法を行えるよう最大限サポート致します。
末期腎不全患者が、腎代替療法を導入するということは、患者さん・ご家族のその後の人生においては極めて大きなイベントです。腎代替療法には、大きく分けて腎臓移植と血液浄化療法があり、さらに血液浄化療法では、血液透析と腹膜透析の2種類に大別できます。
腹膜透析(CAPD)は、腎代替療法の一つで末期腎不全患者の3~4%が施行しており、腹腔内に透析液を入れることで行う透析です。腹膜透析は自己管理が必要な治療法ですが、その長所としては血液透析と比較して病院への通院回数が少なくてすむ(月1~2回程度)ことや残存腎機能が保たれやすいこと、家庭で行うことが出来ることなどが挙げられます。当科では平成4年より腹膜透析外来を開設し、現在15名強の腹膜透析患者さんが通院しております。今後も腹膜透析の普及に努め、地域の透析医療の充実に貢献していきたいと考えています。