外科
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2024年5月 1日
日本内視鏡外科学会技術認定医:ヘルニア
日本内視鏡外科学会評議員・ガイドライン協力委員(腹壁瘢痕ヘルニア)
日本ヘルニア学会評議員・ガイドライン委員・学会誌委員
中国四国ヘルニア手術研究会 副代表世話人
鼠径(そけい)ヘルニア・臍ヘルニア・腹壁ヘルニアは、多くの医療機関で治療が行われており、簡単な疾患と思われがちですが、施設、術者の経験により、成績(合併症、術後の疼痛、再発率)に違いがある、専門性の高い疾患です。再発、合併症の少ない手術を初回に受けることが非常に大切です。
JA広島総合病院外科では、小さな創で治療できる腹腔鏡手術を含めた、安全性、専門性の高い治療を行う目的で、ヘルニア専門外来を開設し、短期滞在手術を行っています。
他院で初回手術を受けられた後の再発症例も、積極的に受け入れています。
「そけい(鼠径)」とは、太ももの付け根の部分のことをいい、「ヘルニア」とは、体の組織が正しい位置からはみ出した状態をいいます。「そけいヘルニア」とは、本来ならお腹の中にあるはずの腹膜や腸の一部が、多くの場合、鼠径部の筋膜の間から皮膚の下に出てくる病気です。一般の方には「脱腸」と呼ばれている病気です。
立った時やお腹に力を入れた時に、もものつけねの皮膚の下に小腸などが出てきて柔らかいはれができますが、普通は指で押さえると引っ込みます。
このはれが急に硬くなり、押さえても引っ込まなくなることがあり、お腹が痛くなったり吐いたりします。 これをヘルニアのかんとんといい、急いで手術をしなければ、命にかかわることになります。
なるべく早めの手術が必要な場合と、経過をみることができる場合がありますので、まずは診察をうけられることをお勧めいたします。
症状の軽い男性では、経過観察が可能な場合がありますが、高齢女性では、かんとんをおこす可能性が高いため、経過観察は勧められません。
手術の方法は、従来から行われているそけい部切開法と、近年急速にひろがりつつある腹腔鏡手術の大きく2つの方法に分かれ、いずれもメッシュを用いた修復です。当科ではどちらも可能です。
腹腔鏡手術ではおへそに約1-2cmの小切開をします。他に5mmの創を2か所おき、手術をします。しばらくすると創部はほとんど目立たなくなります。
若年女性では、メッシュを用いない術式も行っています。
腹腔鏡手術は高度な技術を要するため、日本ヘルニア学会および国際ガイドラインでは、「十分習熟した外科医が行うこと」と記載されています。当科では、ヘルニア領域での日本内視鏡外科学会技術認定取得医(手術ビデオで審査され、合格率は約20%です)が担当しますので、ご安心ください。
そけいヘルニアは、かんとんさえしなければ生命にかかわらない病気であるため、安全に手術が行われることが何よりも大切です。そのため、当院では、全例、麻酔科専門医が麻酔を担当します。
手術の前日の午前中に、麻酔科専門医による診察があります。
手術の翌朝に退院は可能ですが、術後の痛みも多少はありますので、もう1泊ゆっくりしていただくことも可能です。
写真:日本内視鏡外科学会総会(2018年12月)、ヘルニアセッションでの司会