呼吸器外科

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肺癌の最近の話題

2017年1月 1日

最近の肺癌の話題と言えば、薬物療法に関する事が多かったように思われます。肺癌の薬物療法と言えば、プラチナ製剤等の殺細胞性抗癌剤による治療、ゲフィチニブを初めとする分子標的治療薬による治療が代表的な物でした。これらとは異なる薬剤として、新たに登場したのが免疫チェックポイント阻害剤となります。

初めて肺癌の領域で免疫チェックポイント阻害剤が承認されたのは、2015年12月のニボルマブになります。ニボルマブは2次治療以降の非小細胞肺癌に対する治療として承認されました。それからしばらくして、ペムブロリズマブも非小細胞肺癌の治療薬として承認されました。ペムブロリズマブは腫瘍細胞表面のPD-L1と呼ばれる物質の発現を調べ、その発現の割合によって、1次治療から使用することも可能となっています。

これらの免疫チェックポイント阻害剤の特徴として、薬剤は腫瘍細胞に直接作用しないという点が挙げられます。薬剤はT細胞などの免疫細胞に対して作用し、免疫機構を活性化することにより、抗癌作用が発揮されます。そのため、様々な腫瘍に対する効果が認められており、他の悪性腫瘍に対する適応も徐々に拡大されています。副作用に関しても、他の薬剤とは少し違ったものが認められています。いわゆる自己免疫疾患と呼ばれるもので、内分泌障害や間質性肺疾患、大腸炎、1型糖尿病 などが挙げられます。これらの副作用に十分な注意を払いながら、治療を行うことが重要となります。

免疫チェックポイント阻害剤以外で話題になった薬剤として、オシメルチニブが挙げられます。この薬剤は分子標的治療薬の一つで、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤です。EGFRチロシンキナーゼ阻害剤を使用していると、徐々に効果が落ちてくることがあります。その原因の一つとして、EGFRにT790M変異が発現することが知られています。オシメルチニブは、このT790M変異があるチロシンキナーゼを阻害することにより抗腫瘍効果を発揮します。 これらの新たな薬剤は未知の部分も多く、医療者も手探りで治療を行っている状態でもあります。しかしながら、患者に少しでもより良い治療を提供できるよう、日々の研鑽を積んで参りたいと考えております。

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